加齢に伴って、骨格筋量や筋力、身体機能が低下した状態を「サルコペニア(筋肉減少症)」と言います。サルコペニアを放置していると、体を動かすのが億劫になり、さらに筋力が落ちる悪循環に陥りかねません。
今回は、サルコペニアの原因や症状、予防のポイントなどについてご紹介します。サルコペニアを予防して健康的な体を保ちたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
サルコペニアとは?
サルコペニアとは、加齢に伴って筋力が衰え、身体機能が低下した状態のことです。一般的に骨格筋量の低下は25~30歳頃から始まり、生涯を通して進行します。サルコペニアになると、抗重力筋の低下が起こるので、歩行や立ち上がりがだんだんと困難になります。放置していると、歩行困難や寝たきりにつながる恐れもあるのです。
サルコペニアは筋力の低下が病態なので、十分な運動や栄養摂取によって筋肉量を増やせば、症状の悪化をある程度抑えられます。
サルコペニアの症状
サルコペニアになると、筋肉量が減少して筋力が低下するため、以下のような症状が表れます。
- 立ち上がるときに手をつく
- 歩くのが困難になる
- つまづきやすくなる
- 重たい荷物を持ち上げにくくなる
このような症状によって体を動かすのが億劫になり、外出しなくなると、さらに筋力が低下して寝たきりになってしまう恐れもあります。また、転倒や骨折のリスクも高くなります。
また筋肉量が減少すると、血糖値をコントロールする力が低下して血糖値が大きく変動しやすくなります。
サルコペニアの原因
サルコペニアは、加齢を原因とする「一次性サルコペニア」と、活動不足や栄養不足、病気などを原因とする「二次性サルコペニア」に分けられます。ここからは、それぞれの原因について詳しくご紹介します。
一次性サルコペニア
加齢以外に明らかな原因がないサルコペニアです。若い間は筋肉が作られる量と壊される量のバランスがとれています。しかし、高齢になると、筋肉が作られる量が減り、壊される量が増加するため、筋肉が減りやすい状態になってしまうのです。
二次性サルコペニア
活動、疾患、栄養が原因で起こるサルコペニアで、年齢に関係なく、若い人に起こることもあります。二次性サルコペニアは、下記の様に細分化されています。
活動によるサルコペニア
寝たきりや長期的な安静状態、不活発な生活スタイル、無重力によるもの
疾患によるサルコペニア
重症臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓、脳)、炎症性疾患、悪性腫瘍、内分泌疾患によるもの
栄養によるサルコペニア
エネルギーとタンパク質の摂取量不足(吸収不良、消化管疾患、および食欲不振を起こす薬剤使用)などによるもの
サルコペニアのセルフチェック方法
サルコペニアかどうかをセルフチェックする方法として、以下の3つが有名です。
指輪っかテスト
ふくらはぎの最も太い部分を、両手の人差し指と親指で作った輪っかで囲んでみましょう。指輪っかでふくらはぎを囲めてしまう人や、指輪っかとふくらはぎの間にすき間ができる人は、サルコペニアの有病率や新規発症リスクが高いことが分かっています。
開眼立脚位テスト
滑りにくい床に素足で立ち、両手を腰に当てて、片足を5cm程度上げて、立っていられる時間を計測するテストです。立っていられる時間が8秒未満の場合は、サルコペニアの可能性があります。なお、片足立ちをする際は、転倒しないようにつかまれるものを近くに用意しておいてください。
5回立ち座りテスト
まず、ひじ掛けのない椅子に座り、両手を交差して胸に当て、足は肩幅程度に開きます。座った状態から、反復して立ち座り動作を5回繰り返し、かかった時間を計測するテストです。5回立ち座りする動作が12秒以上かかった場合、サルコペニアの可能性があります。
サルコペニアを改善・予防するポイント
サルコペニアを改善・予防するためには、運動と食事が大切です。ここからは、サルコペニアを改善・予防するポイントについてご紹介します。
運動を習慣にする
サルコペニアを改善するためには、筋肉に抵抗をかける「レジスタンス運動」が効果的です。とくに筋力が低下しやすい足を鍛えられる、簡単なレジスタンス運動を2つご紹介します。
つま先とかかとの上げ下げ
- 椅子に腰掛けて、かかとを床につけた状態でつま先をしっかり上げ、2~3秒キープした後下ろす
- つま先を床につけた状態でかかとを上げ、2~3秒キープした後下ろす
- 1~2を1セットとし、10セットほど繰り返す
片足上げ膝伸ばし
- 椅子に深く腰掛けて、体が後ろに反らないよう注意しながら、片方の膝を1回伸ばして下ろす
- 反対の膝も同様に伸ばして下ろす
- 1~2を1セットとし、10セットほど繰り返す
食生活を見直す
サルコペニアを改善・予防するためには、食事の改善も重要です。特にタンパク質が重要で、サルコペニアの改善には、体重が60㎏の人なら72~90gほどのタンパク質が1日に必要とされています。タンパク質は、肉類や魚類、大豆製品、乳製品、卵などに豊富に含まれています。
また、カルシウムと共に、骨をつくるために必要な栄養素であるビタミンDも重要です。血中のビタミンDレベルが低い人は、握力や歩行速度などの身体機能が低いことが実験で示されています。ビタミンDはイワシやサケ、ウナギなどに多く含まれています。また、日光に当たると皮膚で合成されるので、適度な日光浴もおすすめです。
サルコペニアを改善・予防していつまでも健康に!
今回は、サルコペニアの原因や症状、予防のポイントなどについてご紹介しました。加齢によって身体機能が低下するサルコペニアを放置していると、筋肉がどんどん衰えてしまいます。サルコペニアを改善・予防するために、食事や運動の習慣を見直しましょう。