男性ホルモンとして知られているテストステロンが、実は女性の体内にも存在しているのをご存知でしょうか。今回は、意外と知られていない女性の体とテストステロンの関係や、テストステロンの働きについて解説していきます。
テストステロンについて
男性ホルモンという言葉のイメージから、テストステロンが女性にも存在することに驚かれる方もいらっしゃることでしょう。ここでは、テストステロンの働きについて解説していきます。
性ホルモンは男女どちらかだけのものではない
女性の体内には、男性の10分の1ほどの量のテストステロンが存在します。
女性の場合は、卵巣や副腎から分泌されています。また、エストロゲンの一種であるエストラジオールは、テストステロンから合成されるのです。
逆に、男性の中にも、女性ホルモンであるエストロゲンは存在します。つまり、男性ホルモンも女性ホルモンも、男女どちらかだけの体に存在するものではなく、男性には男性ホルモンが、女性には女性ホルモンが相対的に多く分泌されているのです。
テストステロンの働き
テストステロンは、筋肉や骨を丈夫にする役割をしています。ですので、テストステロンの分泌量が多い男性の方が、女性よりも筋肉をつけやすく骨格が大きくなりやすい傾向にあります。
また、やる気や集中力、精神的な活力の源として、社会性にも影響します。
他に、内臓脂肪の蓄積や、認知機能にも関係しています。加齢やストレスなどでテストステロンの分泌量が減少すると、肥満や骨粗しょう症、認知機能の低下などのリスクが高まります。
テストステロンの女性の身体への影響
テストステロンが女性の身体に与える影響は、どのようなものなのでしょうか。さらに詳しくみていきましょう。
テストステロンによる影響
テストステロンが多い女性は、年齢を重ねても筋肉量や骨密度を維持できる傾向にあるといわれています。逆にテストステロンが少ない方は、気分の障害など、メンタル面への影響が見られるとも言われています。
ただし、テストステロンが多ければ多いほどよいというわけではなく、分泌量が多すぎると多嚢胞性卵巣症候群を発症するリスクが高まります。多嚢胞性卵巣症候群とは卵胞が育たない病気で、症状としては月経不順や無月経、肥満、血糖値上昇などがみられます。
更年期・閉経後のホルモンバランス
女性は、平均的に50歳くらいで閉経を迎え、その前後5年の合計10年を更年期といいます。更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が急激に減少します。その影響から自律神経の乱れが起こり、心身にさまざまな不調が起こりやすくなります。
また、それまでエストロゲンが女性の心身を健やかに保つ働きをしていましたが、閉経後は大幅にエストロゲンの量が減りますので、その恩恵を受けられなくなります。
そこで活躍するのがテストステロンです。エストロゲンに比べて、テストステロンは加齢による減少ペースもゆるやかです。閉経後は、女性の体内では、エストロゲンよりもテストステロンの方が優位になります。すると、今度はテストステロンが、エストロゲンに代わって女性の健康維持をサポートしてくれるのです。
テストステロンは健康長寿の鍵
閉経後はエストロゲンの代わりに、テストステロンが健康長寿の鍵といえるでしょう。閉経後の女性の身体にテストステロンがもたらしてくれる作用や、テストステロンを維持していくために必要なことについてご紹介します。
筋肉や骨を維持する
閉経後の女性はエストロゲンの減少で、骨粗しょう症になるリスクが高まります。骨粗しょう症による骨折や運動能力の低下が、将来の寝たきりリスクにもつながります。テストステロンは閉経後の骨や筋肉をサポートすることが期待できます。
認知力低下を防ぐ
男性より女性の方がアルツハイマー型の認知症を発症する数が多いことが報告されています。 テストステロンは認知機能にも影響すると言われています。
活動的な生活をサポート
テストステロンは、やる気やチャレンジ精神などのメンタル面にも作用します。社会とつながりをもって活動的に生活していくためには、テストステロンは重要と言えるでしょう。
テストステロンを維持するために
閉経後も、テストステロンの量を維持できれば、長く健康を維持するのに役立ちます。それには、食事と運動に気を配ることが大切です。
テストステロンの原材料はコレステロールです。肉や魚、卵など、コレステロールを含む動物性の脂質を適度に摂取するとよいでしょう。さらに、タンパク質もテストステロンを作るために必要です。
また、筋トレをすると、テストステロンの分泌が促進されるといわれています。ただし、激しすぎる運動は逆効果ですので、スクワットなど手軽にできる筋トレや、ウォーキング、ジョギングなどの適度な運動を生活習慣に取り入れましょう。
テストステロンは女性の健康もサポートしている
今回は、テストステロンの女性の体への影響や働きをご紹介しました。
テストステロンは、閉経後の女性にとって健康寿命の鍵となります。年齢を重ねても、健康的な生活を送っていくために、テストステロンを意識して食生活や運動習慣も改善していきましょう。