乳房(バスト)の病気といえば「乳がん」を思い浮かべる方が多いと思いますが、乳がん以外にもさまざまなトラブルがあります。具体的にどのような乳房の病気があるのか紹介するとともに、「病気かもしれない」と判断した時にご自身が取るべき行動をお伝えします。
これって乳がん?症状別でみる病気チェック
乳房の異常や変化は、日頃からバストをセルフチェックすることで病気の早期発見につながります。入浴時や着替えのタイミング、寝る前の仰向け状態など、ちょっとしたスキマ時間に習慣として取り入れるのがポイント。注意すべきバストの異常について自分で見て触って、こまめに確認してみましょう。
・触るとしこりがある
・乳頭から分泌物が出る
・胸に腫れ・痛みがある
・乳首・乳輪にびらんやただれがある
・乳房に凹みやくぼみがある
・赤み・かゆみ・湿疹がある
これらの症状は乳がんだけでなく、乳腺症などの乳房のトラブルや高プロラクチン血症といった内分泌の病気などさまざまな可能性があります。
いつもと違う乳房の異常や変化を感じたら、早い段階で産婦人科へ行くことがおすすめです。
「いつ症状に気がついたのか」「母親や姉妹など近しい人で胸の病気をした人はいないか」こうした情報も大切な診断材料になりますので、ぜひ覚えておいてくださいね。
乳がんだけじゃない。乳房の病気&トラブル
症状を自覚している場合、可能性として考えられる病気の特徴を知識として頭に入れておくと安心につながります。ここでは、乳がん以外の病気について解説していきます。
【乳腺症】
しこりや乳頭からの分泌など、症状が似ていることから乳がんと間違われやすい乳腺症。ホルモンバランスが原因といわれている良性の腫れを伴いますが、病気ではないため基本的に治療の必要はないとされています。
【乳腺炎】
乳腺で炎症を起こす病気で、急性と慢性があります。乳首から細菌が入り、腫れや痛み、熱を伴うことも。症状にもよりますが、乳房マッサージや抗生物質、消炎剤で治療します。膿が溜まってしまった場合は、皮膚を切開するケースもあります。
【乳腺線維腺腫】
乳房に弾力があって痛みのないしこりがある場合、乳腺線維腺腫である可能性が考えられます。20〜40代女性の発症が多く、一般的には経過観察で様子を見ますが、しこりが大きい場合は切除することもあります。
【葉状腫瘍】
痛みのない複数の円形しこりである場合に可能性が高いとされるのが葉状腫瘍。悪性・良性・境界病変(中間型)に分類され、急速に大きくなる場合は手術で切除します。再発するケースも多いため、手術後も定期的な経過観察が必要になります。
【乳管内乳頭腫】
乳管にできる良性の腫瘍ですが、乳がんとの見分けが難しく、血液混じりの分泌物が出る場合も。30〜50代女性の発症が多い傾向があります。通常は経過観察ですが、悪性や血性の分泌液が出続けると手術になる可能性があります。
【高プロラクチン血症】
出産をしていないのに乳汁(母乳)が出る病気。母乳をつくるホルモン「プロラクチン」の数値が高い状態になるという特徴があります。原因にはストレスや薬の副作用などがあり、薬や漢方、低用量ピルが治療方法としてあります。
【皮膚炎】
乳頭や乳輪でただれやかゆみ、湿疹、炎症を起こしている場合は皮膚炎の可能性が考えられます。下着などによる刺激や皮膚のバリア機能低下、ホルモンバによる皮脂分泌などが主な原因。一時的な炎症であれば、ステロイドや保湿剤が処方されます。
違和感・異常を感じたら産婦人科へ
乳がんと共通する症状も多い、乳房に関わる病気。病気について多くの研究や学説が飛び交っていますが、個人によって症状が異なることも多く、経過観察から手術による術式まで治療法も大きく変わります。
乳房に違和感や異常を感じたら、まずは産婦人科を受診して病院で検査を行うこと。産婦人科では、主に下記のような検査方法で乳房の状態を診断します。
マンモグラフィ(乳房専用のレントゲン検査)
石灰化や白い塊状の影である腫瘤(しゅりゅう)、はっきりしない影として映る局所的非対称性陰影(FAD)といった初見を発見するための検査。初期の乳がんをはじめ、さまざまな病気の可能性を判定します。妊娠中や妊娠の可能性がある場合は検査が受けられません。
乳房超音波検査
超音波の機械を使って乳房の内部を観察する検査方法。腫瘍の有無や大きさなどが分かり、乳腺のう胞、乳頭腫、乳腺線維腺腫、乳腺症といった良性・悪性の疑いを判別します。石灰化の判断がしにくいという欠点があるので、マンモフラフィト併用しての検査がおすすめとされています。こちらは妊娠中でも検査可能です。
乳房視触診検査
医師が直接見て触れて確認する検査方法です。くぼみ・しこりがないか、リンパ節が腫れてないか、乳頭から分泌物がないかチェック。体への負担はありません。併せて、体調の様子や生理周期、月経の状況、過去の妊娠経験、家族の病気といった問診を受けます。
まとめ
大切な乳房に痛みや腫れ、しこりといった症状があると不安な気持ちになるものです。乳がんを含め、乳房にまつわる多くの病気は早期発見で手術することなく治療できる可能性もありますので「あれ?」と思ったら産婦人科へ足を運んでみることが何よりも大事。
健康増進法第19条の2に基づく健康増進事業として、40歳からは2年に1回の問診・視診・触診・マンモグラフィ検査が受けられる「乳がん検診」がお住いの市区町村で受けられますので、ぜひ利用しましょう。
【参考】
花王
社会医療法人 敬愛会 中頭病院
All About 乳がん.Info
日本予防医学協会
厚生労働省
サワイ健康促進課
乳がん検診の適切な情報提供に関する研究