2023/11/25 卵子凍結での"妊活"って?卵子凍結について徹底解説

最近「卵子凍結」という言葉を耳にしたり、目にしたりする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。東京都が卵子凍結に対する助成を開始したことは、大きなニュースにもなりました。 今回は、卵子凍結の目的やリスク、助成制度についてご紹介します。
気になっていた方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

卵子凍結とは

将来妊娠を望む人から採取した卵子を凍結し、妊娠を希望する時期まで保管しておくことを、卵子凍結といいます。

精子は毎日作られますが、卵子の数は、生まれた段階で決まっています。
卵子の元となる卵母細胞の数は、生まれたときには100〜200万個ありますが、10代では30万個、20代では10万個、30代では2~3万個と減少し、閉経時にはほぼゼロに近づいていくのです。また、1回の排卵には約1000個の卵母細胞が消費され、女性が一生で排卵する卵子の数は400~500個と推定されています。数が減るだけでなく、年齢に伴い卵子の質が低下していき、妊娠率も下がります。
人の細胞は、-196℃という超低温の液体窒素の中で凍結することで、化学変化がほとんど起こらない状態で保管することが可能です。
その技術を利用して、若い時期の卵子を保管し、妊娠のしやすさを保つのが目的です。

尚、卵子凍結や使用には年齢の目安があり、日本生殖医学会が2013年に出した「社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン」では、40歳以上卵子の採取、凍結保存した卵子を45歳以上で使用することは推奨しないとしています。

 

卵子凍結をする理由

卵子凍結が行われる背景には、次の理由があります。

 

医学的適応

医学的適応とは、病気などを理由に、卵子凍結が必要となる場合です。
がんなどの治療によって、妊娠できる年齢の方であっても、妊娠する能力が低下したり失われたりする可能性があります。その場合、治療前や治療の初期段階で卵子を凍結し、妊娠の可能性を将来に残せるようにするのです。

社会的適応

社会的適応とは、ライフプランの選択肢として、卵子凍結を行う場合です。
現代は女性の社会進出により晩婚化し、出産年齢の高齢化が進んでいます。現時点ではパートナーがいない女性が将来に妊娠を望む場合や、キャリアの都合ですぐには妊娠を希望しないなどの場合に、卵子凍結を行うことがあります。

このように、いずれも妊娠の可能性や選択肢が広がることを期待して、卵子凍結が行われるのです。

卵子凍結のデメリットとリスク

妊娠の可能性が広がるとはいえ、デメリットやリスクないとは言えません。

 

妊娠が保証されているわけではない

卵子凍結するにあたって知っておきたいのが「卵子を凍結しても、妊娠が保証されるわけではない」ということです。
妊娠を望むタイミングがきたときに凍結した卵子から妊娠が成立するまでには、複数の段階があり、その全てに成功する必要があります。

まず凍結した卵子を融解し、パートナーの精子と体外受精をすると、受精卵になります。受精卵から細胞分裂で育った胚を母体の子宮に移植し、無事に着床すると妊娠成立です。

ただし、融解する段階で卵子が破損してしまう可能性や、受精や着床がうまくいかない場合もあります。妊娠が成立したとしても、流産や死産の可能性もありますので、日本産科婦人科学会がまとめたデータでは、出産に至る確率は、凍結した卵子1個あたりで4.5%~12%となっています。このように、卵子凍結によって無事に出産できる確率は決して高くはないのです。

加えて、若い頃の卵子を保管しても高齢出産になる場合には、母体が病気になる可能性や赤ちゃんの発育への影響など、リスクも高くなります。凍結により卵子の老化はとめられても、母体の老化をとめることはできないのが現状です。

副作用の可能性がある

採卵時に使用する排卵誘発剤により副作用が起こる可能性があります。
卵巣が排卵誘発剤に過剰反応して、腹部が腫れたり腹水がたまったりすることがあるのです。これを「卵巣過剰刺激症候群」といい、悪化すると血栓症や腎不全のような深刻な状態につながる場合もあります。

費用が高額である

もうひとつ大きなデメリットとして、卵子凍結は自費診療となり、費用が高額であることもあげられます。
卵子を凍結するときだけでなく、凍結した卵子の保管や使用にも費用がかかります。1回の卵子凍結にかかる費用は、クリニックや凍結する卵子の数によっても変動するため、事前に確認しておくことが必要です。さらに、凍結を維持するには年間の更新料が、卵子を使用して妊娠を望む場合には卵子を融解してから子宮への移植まで、それぞれの過程に費用がかかります。

卵子凍結の流れ

事前の検査で、子宮や卵巣に問題がないかや卵子の数を調べます。問題がなければ、採卵の2〜3週間前くらいから自己注射や飲み薬で排卵誘発剤を投与します。

通常は1度に1個~2個の卵子が排卵されますが、1度の排卵でたくさんの卵子を採取するために、排卵誘発剤を使って、両方の卵巣で複数の卵子を育てます。問診から採卵日まで、複数回の通院が必要です。

採卵日になったら麻酔をし、卵巣に針を刺して採卵します。採卵前日から2日間入院が必要なクリニックもあれば、採卵日に全て完了し、その日のうちに帰宅できるクリニックもあり、スケジュールは一律ではありません。
1度の採卵で複数の卵子の採卵を目指します。ただし、採取した卵子の中には未熟卵や変性卵がある可能性もあるため、採取した全ての卵子を凍結できるとは限りません。また、卵子の数に応じて、保管料がかかります。

 

卵子凍結に関する助成制度について

これまで、がんの治療などを理由に卵子凍結を望む方に対し、独自の助成制度を設ける自治体はあるものの、基本的には自費診療とされていました。高額の医療費がネックでしたが、2021年より、医学的適応に対しては、公的助成制度が開始されました。

また、2023年より東京都は、卵子凍結に係る費用や凍結卵子を使用した生殖補助医療に対し、助成を開始しました。卵子凍結だけでなく、凍結卵子による体外受精等の生殖補助医療に関しても助成の対象になります。少子化対策の一環で都道府県として行うのは全国初。
卵子凍結に関しては、18歳~39歳までの女性を対象に、説明会の参加や都が指定する医療機関の利用などの条件を満たした場合、最大30万円の助成金が受け取れます。

今後、他の自治体も東京都に追随していく可能性も考えられますが、社会的適応の卵子凍結については、現時点では自費診療で行うケースが多いようです。

 

卵子凍結を選択する前に、デメリットやリスクもよく検討しよう

卵子凍結をすることで、妊娠は保証されませんが、将来の選択肢を増やせる可能性があります。卵子凍結を選択肢のひとつとして捉え、費用面や副作用などのリスクも合わせて検討することが大切。卵子凍結を望む場合は、事前にしっかり情報収集を行い、後悔のない選択をしましょう。