ニュースでは連日、性被害や望まない妊娠などに関する事件が報じられています。日本で性に関わる事件がなくならない原因の1つは、不十分な性教育であるといわれています。海外に目を向けると、日本よりも積極的に性教育を学校で行っている国が少なくありません。
今回は海外の事例と照らし合わせながら、日本の性教育のあり方についてご紹介します。プライベートゾーンの守り方や性行為について、子どもたちにどう伝えればいいか迷われている方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本における性教育の実態
日本の性教育は、最低限の知識を扱うにとどまり、海外と比べると時間的にも内容的にも不十分といわれています。なぜなら学習指導要領で性に関して、いわゆる「はどめ規定」が存在しているからです。
はどめ規定では、小学5年の理科において「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」、中学1年の保健体育科において「妊娠の経過は取り扱わないものとする」とされています。つまり授業の中で受精については教えられても、性交や避妊については教えられないのが現状です。
このはどめ規定を根拠として、「学校で性行為について教えてはならない」との認識を持つ教員が多く、学校で性感染症や避妊に触れづらい状況が続いています。
海外での性教育は?国ごとの特徴を押さえよう
ユネスコが中心となって2009年に発表した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、5〜8歳、9〜12歳など、年齢を区切って、どのような内容を教えると良いかを説明しています。欧米を中心とした諸外国ではこのガイドラインに基づき、学校教育の中に性教育を取り入れているのです。ここからは、海外での性教育について例を挙げてご紹介します。
オランダ
オランダでは、4歳で始まる初等教育の段階から性教育が義務付けられています。性的発達や性行動にとどまらず、性に関する情報収集のやり方や他者の尊重など、幅広いテーマを科目横断的に扱っている点が特徴です。
フィンランド
フィンランドでは、性教育の内容を含む「健康教育」が13~15歳を対象に必修化されています。フィンランドは教育に関する地域や学校の権限が大きく、教科書検定制度がありません。そのため、教員養成の課程で性教育に関するプログラムなどが重視されています。
内容もさまざま、性に関する権利や避妊方法、ジェンダーなど幅広い内容が含まれています。
アメリカ
アメリカでの性教育は、主に以下の3パターンに分けられます。
・包括的性教育:性を多角的に捉えて、避妊や妊娠中絶、同性愛を否定しない
・禁欲教育:結婚まで性交せずに、禁欲生活を送ることが大切とする
・禁欲プラス包括的性教育:2つの考えを織り交ぜた教育
アメリカでは政権や社会情勢などにより、包括的性教育と禁欲教育の間で揺れ動きが見られます。なお学校教育は州の責任において実施されていますが、2022年時点で29の州とコロンビア特別区で性教育が義務付けられています。
オーストラリア
オーストラリアでは、理科や保健体育の科目で性教育が取り入れられることが多いです。その内容は性の健康や性的アイデンティティ、人間関係などを含む包括的なものとなっています。とくにオーストラリアは多民族・多文化国家であることから、人間関係についての内容に重点が置かれている点が特徴です。
またオーストラリアでは、政府指定の教科書がありません。そのため、教員自身が教材やカリキュラムを作らねばならないため、教員への研修や支援体制が充実しています。
日本の性教育はこれからどうあるべき?
ここまで、日本と海外における性教育の実態についてご紹介しました。以上を踏まえて、日本の性教育がこれからどうあるべきかについて見ていきましょう。
日本における現在の性教育の問題点とは
上述したように、日本では性行為や避妊について学校で教えづらい現状があります。性教育が十分に行われないと、児童生徒の性知識不足・性知識の偏りにつながりかねません。日本財団が2021年6月に行った「18歳意識調査」の結果によると、「自分に性に関する知識が十分にあると思うか」との質問に対して、45%近くの人が「わからない」と回答しました。
この結果から、児童生徒が性に関する正しい知識を得られる教育をさらに充実させる必要があると言えるでしょう。性教育の充実が思いがけない妊娠や性感染症、性被害などのリスク低減につながると考えられます。
プライベートゾーンの守り方について家庭でも対話しよう
海外で実践されているように、幼い時期から性教育を始めることで、性への理解が深まりやすくなります。子どもたちに性について正しく知ってもらうためには、学校教育を充実させるだけでなく、家庭での性教育も大切です。毎日子どもたちと接する保護者の方が、成長段階に応じて性に関する知識を教えられるように対話を重ねてみましょう。
たとえば、「プライベートゾーンは水着で隠れる部分のことで、他人に見せたり触らせたりしてはいけないんだよ」と小さい頃から教えると良いでしょう。またお子さんが「自分はどうやって生まれてきたの?」と聞いてきたら、ごまかすのではなく正直にわかりやすく伝えるのも大切です。性に関する話題をタブーとするのではなく、日常の中で自然に会話に織り交ぜるようにすれば、子どもたちに正しい知識が身につきやすくなります。
海外の事例を参考に、大切なからだを守るための知識を身につけよう
今回は日本における性教育のあり方について、海外の事例と照らし合わせながらご紹介しました。海外では性教育は幼い時期から行われ、学校教育で積極的に取り入れられています。子どもたちの大切なからだを守るため、家庭でも性に関する知識を教えていきましょう。