2022/08/13 子どもにどう伝える?何を教える?性のこと、カラダのこと

子どもへの性教育というと、性行為について思い浮かべるかもしれませんが、必ずしも性教育=性行為とは限りません。年齢にもよりますが、小さな子どもであれば、カラダのこと、相手や自分を大切にすることを教えるのも性教育の1つ。今回は、子どもに性のことやカラダのことについて何をどう伝えていくか、子どもへの性教育についてお話します。

 

日本ではどんな性教育をしているの?性について十分に学べていない日本の子どもたち

日本での性教育は、文部科学省の学習指導要領に基づき、小学校、中学校、高校とそれぞれのカラダやココロの発達に応じて教育内容が決められています。

小学校では、思春期に差し掛かるとそれぞれカラダの変化が生じることなどが保健体育の授業で教えられます。中学校では受精や妊娠、性感染症予防について。高校では妊娠、出産、これからのライフプランについて学びます。

一見するととても充実しているように見える日本の性教育。しかし、十分とは言えないのが現状です。

 


性について十分に学べていない子どもたち

日本の小学校、中学校の性教育では、「歯止め規定」と言われるものが存在し、性行為について教師は教えられないことになっています。

例えば、中学校の学習指導要領にも「妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過 は取り扱わない」と書かれており、妊娠の経過、つまり性行為について教えることはできません。

そうなると、「なぜ妊娠するのか」「性行為がどういう結果になるのか」「なぜコンドームを使うのか」という本質的な理解が難しくなるのではないでしょうか。

現在の日本では、望まない妊娠や性感染症を避けるため、また、自分のカラダについて学び自分で判断して行動するスキルを身につけるような性教育が十分ではないと言われています。

幼児期は対象にされていない日本の性教育

未就学児については、小学生や中学生のような性教育は基本的には行われていません。各園で個別に行われることはあっても、まだまだ少数派ではないでしょうか。

海外を広く見ると性教育は幼児期から行われていて、ユネスコが制定する「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」でも、5歳からの性教育について書かれています。

「そんな小さな子どもに性教育を教えるなんて……。」「小さな子どもに何を教えればよいの?」と、日本ではなかなか浸透していなかった幼児への性教育。しかし、性教育は、性行為について教育するだけではありません。

小さな子どもであれば、お友達などの他者との関わり方、誰しも自分に「カラダ」の権利があることなどを伝えていくことが大切と言われています。

家庭での性教育で気をつけたいこと

小さな子どもには家庭での性教育から

幼稚園や保育園での性教育はまだまだ一般的ではないですが、小さな子どもへの性教育は家庭でもできます。「どんなことを教えれば良いの?」と悩む方も多いかと思いますが、普段の生活の中で少しずつ伝えていくことができるのではないでしょうか。

例えばトイレでの排泄時。性器を清潔にケアすることを伝えるのも性教育の1つです。また、水着で隠れる場所は自分だけのプライベートゾーンであること、プライベートゾーンは自分だけが自由に見たり触ったりできることも伝えていきたいですね。

スカートめくりやズボン下ろしなども「子どもがやりがちないたずら」ではなく、お友達が嫌だと思っているならやらないこと、やられて嫌だったら「嫌だ」と伝えてよいことなどを話すのも大切です。

子どもに伝えるときに気をつけたいこと

家庭での性教育において気をつけたいのは、性=タブーなことと伝えてしまうことです。小さな子どもも性に興味を持ちますし、それは自然なこと。

男の子であれば、「なんで自分にはおちんちんがついているのにママにはついていないんだろう?」と疑問を持つのも不思議ではありません。また、自分のおちんちんってなんなんだろう?と性器を触ることもあるでしょう。女の子においても同様です。

そんなときに「触っちゃダメ!」や「そんなこと話さないで!」と言ってしまったら、子どもたちは性について話してはいけないこと、タブーなこと、隠さなくてはいけないことという認識を持ってしまうのではないでしょうか。

「赤ちゃんはどうして生まれるの?」にどう対応する?

子どもが4、5歳になると「赤ちゃんはどうして生まれるの?」という質問を受けるという保護者の方もいるかもしれません。

「そんなこと聞いたらダメ!」と言わず、「良い質問だね」と子どもが疑問に思う気持ちをまずは受け止めてあげましょう。そのうえで、「コウノトリさんが運んできたんだよ」などと濁さずに、科学的な観点で一緒に考えてあげると良いと言われています。

難しい話かもしれませんが、子どもには学ぶ力があるもの。男性の精子と女性の卵子が性行為によって合わさることで新しい命となること、信頼し合う大人同士が子どもが欲しいときに性行為を行うのは自然なことだとだと伝えるのは悪いことではありません。

小さな子どもは話を聞いても「ふーん」で終わるかもしれませんが、大人が「ダメ!」と切り捨てるのではなく、向き合うことに意味があるのではないでしょうか。

異性の子供への性教育に悩む

子どもへの性教育の中でも、異性の子供への性教育ほど伝え方に悩みますよね。とくにひとり親のパパだけやママだけの場合はなおさらではないでしょうか?

性器ケアの方法や、男の子なら思春期になって精通がきた、女の子なら生理になったなど、節目節目でどうやって対応すればよいのか分からないということもあるでしょう。

ひとり親家庭の場合などは、小児科や婦人科の先生など専門家に性に関する子どもへの伝え方や接し方について相談してみるのも一つの方法です。

小さな子どもに伝えたい自分を大切にすること、自分が大切にされていること

小さな子どもへの性教育と聞くと、「何を教えればよいの?」と悩んでしまうかもしれません。1つの理由として、私たち大人が受けてきた性教育が残念ながらあまり充実していなかった可能性も考えられます。

性行為や妊娠出産について、教育というよりも自分達の経験で学んだ部分も多く、何よりも子どもの頃から「自分を大切にすること」について十分に学んできたとは言えないという人も多いかもしれません。
だからこそ、子どもたちには「自分を大切にすること」、そして「自分が大切にされていること」を伝えていくのが性教育の第一歩ではないでしょうか。