2024/08/01 膣内フローラとは?膣内環境を整えるために気をつけたいこと

「膣内フローラ」という言葉をご存知でしょうか?腸内フローラのように、膣内にも常在菌が多数存在していて、私たちの体に影響を与えています。
今回は、膣内フローラをテーマに、膣内環境が乱れる原因や膣内環境を整えるために気をつけたいポイントについて解説していきます。
「膣内フローラ」という言葉を初めて聞く方、「私の膣内環境は大丈夫?」と気になっている方はぜひ、本記事を参考にしてみてください。

膣内フローラとは

はじめに、膣内フローラの基本情報や役割についてみていきましょう。

膣内には細菌がいる

冒頭でもお伝えしました通り、私たちの膣内にはたくさんの常在菌が存在しています。その膣内の細菌の集合体を膣内細菌叢(ちつないさいきんそう)といいます。
腸内に菌が群がっている状態がお花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ぶのと同様に、膣内細菌叢を「膣内フローラ」と呼ぶこともあります。

膣内フローラの役割

健康な状態の膣内フローラの大半を占めるのは、ラクトバチルス属の乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)です。乳酸桿菌は、乳酸菌の一種で、膣内の上皮細胞内にあるグリコーゲンを代謝して、乳酸に変えています。それにより膣内を酸性に保ち、雑菌の侵入や繁殖を防いでいます。これを膣の自浄作用といいます。

膣内フローラが乱れると、何が起こるの?

膣内フローラは、膣内の自浄作用の役割があることがわかりました。もし、この膣内フローラが乱れると、どのようなことが起こるのでしょうか。膣内フローラが乱れる原因や、起こりうるトラブルについてみていきましょう。

膣内フローラが乱れる原因

膣内フローラが乱れる原因として、以下の原因が考えられます。

抗菌薬の使用

何らかの感染症にかかった際に、病院で抗菌薬が処方されることがあります。抗菌薬の種類によっては、病気の原因である細菌だけでなく、膣内の乳酸桿菌まで死んでしまうこともあり、膣内フローラの乱れにつながることがあります。

過度の膣洗浄

膣まわりをケアしようとして、過度に膣洗浄を行うと必要な乳酸桿菌を洗い流してしまうことも原因として考えられます。

閉経後のエストロゲン量の低下

閉経にともなってエストロゲンの分泌が減ることも、膣内フローラの乱れにつながるといわれています。

睡眠不足やストレス

睡眠不足やストレスも、膣内フローラが乱れるきっかけとなります。

細菌性腟症

膣内フローラの乱れが原因でよく起こる症状に「細菌性腟症」があげられます。膣内に雑菌が増殖することによって起こります。細菌性腟症を発症すると、以下の症状がみられるようになります。

  • おりものの量が増える
  • 灰色のおりものが出る
  • おりものが生臭い


細菌性腟症は、自然治癒するケースもあります。しかし、重症化すると、子宮頸管炎や子宮内膜炎、卵管炎などの発症リスクが高まります。また、妊婦の場合には、子宮感染症や早産につながるリスクもあります。

おりものに異常や変化を感じた場合には、早めに病院を受診することをおすすめします。

性器カンジダ症

カンジダ菌は、膣内の常在菌であり、健康な状態でも膣内に存在しています。しかし、膣内フローラが乱れると、カンジダ菌が異常増殖し、「性器カンジダ症」を発症することがあります。

  • 性器カンジダ症には、以下のような症状があります。
  • カッテージチーズ状のおりもの
  • 外陰部のかゆみや灼熱感
  • 膣周辺の発疹


性器カンジダ症も細菌性腟症と同様に、自然治癒することもありますが、症状が出たまま放置していると、全身性のカンジダ症の発症や慢性化するリスクがあります。
また、カンジダ菌は常在菌ですので、治っても再発する可能性もあります。再発予防のためにも、膣内環境の改善を意識しましょう。

妊娠への影響

腟内と子宮内の細菌叢は必ずしも同じではないことがわかっていますが、子宮内環境にも影響する可能性が示唆されています。

注目すべきポイントは、膣内と同様に、子宮内もラクトバチルス属​​が多くを占めていることです。海外では、不妊治療を行ってもなかなか妊娠しない、流産を繰り返してしまう女性の約40~60%に慢性子宮内膜炎が確認されたという研究結果が報告されました。慢性子宮内膜炎の原因は完全には解明されていません。しかし、細菌やウイルスが原因の1つと考えられており、さらに子宮内に存在するラクトバチルス属の菌が他の細菌の働きを抑えるとも言われています。

膣内環境が子宮内環境にも影響を及ぼす可能性があることは、意識しておきましょう。

膣内フローラを整えるためには

膣内フローラを整えて、膣の自浄作用が働く状態を保つには、過度な抗菌薬の利用や膣洗浄を避けることが大事です。どちらも、必要な乳酸桿菌まで排除してしまう可能性があるからです。

また、食事や睡眠など生活習慣を整えて、ストレスをためないようにすることも必要です。とくに、ラクトバチルス属の乳酸菌を多く含む発酵食品や、乳酸菌のエサとなる水溶性の食物繊維とオリゴ糖を含んだ食べ物を積極的に摂るようにするとよいでしょう。

腸内フローラを整えるには、日頃から体のサインに注目を

今回は、膣内フローラの役割や膣内環境を整えるためにできることについて、解説しました。
膣内フローラは、膣の自浄作用の働きをしています。膣内環境を整えるためには、過度な膣洗浄などは避け、食事や睡眠などの生活習慣を整えることが大切です。
また、日頃からおりものの変化など、ご自身の体調の変化に注目しておくことも、膣内フローラの乱れに早く気づくきっかけになります。