卵巣の疾患は女性特有の病気で、子宮や乳房の病気と同様、女性の健康に大きく影響します。しかし、卵巣の疾患は気づきにくいといわれており、気づいた時点では病気が進行していることもあり、注意が必要です。
本記事では、卵巣の疾患が気づきにくい理由や卵巣の主な疾患、早期発見のためにできること、について解説していきます。ぜひ、この機会に卵巣の疾患にも関心を向けてみてください。
卵巣の疾患に気づきにくいのはなぜ?
まず、卵巣の疾患の基本情報や、卵巣の疾患に気づきにくい理由についてみていきましょう。
卵巣疾患とは
卵巣は子宮の左右に1個ずつある臓器で、排卵や女性ホルモンを分泌する働きをしています。卵巣は、腫瘍ができやすい臓器ともいわれており、発生する腫瘍の種類もさまざまです。
腫瘍ができると、普段は2~3cm程度のサイズの卵巣が、10cmほどの大きさになることがあります。
卵巣の腫瘍は、液体がたまった状態のやわらかい「卵巣嚢腫」と、硬い塊ができる「充実性腫瘍」に分類されます。卵巣嚢腫は、一部悪性のものもありますが、多くの場合が良性です。一方、充実性腫瘍は、悪性の卵巣がんである可能性が高く、注意が必要です。
他に、生理周期の影響で排卵後に卵巣が腫れることがありますが、「機能性嚢胞」といい、次の月経までには消滅する一時的な症状である場合がほとんどです。
卵巣の疾患に気づきにくい理由
卵巣は「沈黙の臓器」といわれることがあり、疾患があっても自覚症状がでにくいケースが多いです。腫瘍がある程度までに大きくなったときに、下腹部痛などの症状が出て気づくこともあるようです。
ときに、卵巣腫瘍の付け根がねじれる「茎捻転」や腫瘍の破裂などがあると、激しい腹痛が起こり、緊急手術が必要になることもあります。
卵巣疾患にはどんな種類がある?
卵巣疾患には、卵巣腫瘍、卵巣がん、卵巣炎・卵管炎などがあります。順に詳しくみていきましょう。
卵巣嚢胞の主な種類
卵巣嚢胞には、以下の種類があります。
卵巣から分泌される粘度が低い液体がたまった症状です。年代を問わず、発症する可能性があります。
■粘液性嚢腫
ネバネバとした粘度の高い液体がたまる症状です。腫瘍が肥大しやすいタイプで、なかには30cmを超えることもあります。
■皮様嚢腫
嚢胞の中にドロドロとした液体がたまり、毛髪や歯、骨などが含まれていることもあります。なぜ、毛髪などが含まれるかは、明らかになっていません。
■チョコレート嚢胞
子宮内膜症の影響で、子宮内膜に似た組織が卵巣内にたまった状態です。たまったものがチョコレート色に変色するため、チョコレート嚢胞と呼ばれています。
いずれも良性腫瘍であるケースが多いですが、中には悪性のケースもありますので、経過観察などが必要です。
卵巣がん
卵巣がんは、初期症状が出にくく、早期発見が難しいがんです。下腹部痛、腹部の膨満感、便秘や頻尿などの自覚症状が出たときには、病気がかなり進行しているケースが多いのが現状です。
治療においては、ごく初期段階で発見できた一部のケースを除き、両方の卵巣と子宮を摘出する手術をします。手術と一緒に、抗がん剤治療や放射線治療を行う場合もあります。
卵巣炎・卵管炎
卵巣炎は、卵巣に続く卵管が炎症を起こしたときに併発しやすい病気です。卵管は炎症が起こりやすいといわれる器官です。大腸菌や淋菌、クラミジアなどの細菌や、避妊具やタンポンなどから細菌が卵管に入り込んで炎症が起こります。
急性期には、下腹部痛や高熱、吐き気など、重い自覚症状がでます。慢性化すると卵管が狭くなる、ふさがるなど不妊症にもつながりますので、急性期の段階でしっかりと治療をすることが重要です。
卵巣を摘出するとどんな影響がある?
卵巣に悪性の腫瘍が見つかった場合には、病状に応じて手術で卵巣を全て摘出するケースと、卵巣の悪性の部分だけを摘出し、卵巣の正常な部分は残すケースがあります。
卵巣は片方あれば、女性ホルモンが分泌されますので、妊娠の可能性も残ります。卵巣が片方になったこと自体は、妊娠のしやすさに影響しません。
しかし、両方の卵巣を摘出した場合には、卵巣から女性ホルモンが分泌されなくなるので、妊娠の可能性がなくなるほか、更年期障害のような症状が出ることもあります。
卵巣疾患の早期発見のためには
自覚症状がでにくい卵巣疾患ですが、早期発見のために何ができるでしょうか。順にみていきましょう。
卵巣疾患のサインは?
卵巣に疾患があると、腹痛や腹部膨満感、不正出血、おりものの異常、下腹部のふくらみ、便秘、頻尿などの症状があらわれることがあります。
ところが、下腹部のふくらみを「太った」と解釈をして、体からのサインを見逃してしまうケースもあるようです。症状が出たら、早めに病院を受診することをおすすめします。
定期的な検査を
自覚症状が出にくい卵巣の疾患を早期に発見するには、病院で定期的な検査を受けることが必須です。
婦人科で年に1回は、経腟超音波検査を受けて、卵巣に異変がないかチェックするとよいでしょう。子宮がん検診の際に、卵巣も合わせて検査してもらうのがおすすめです。
卵巣疾患の早期発見には定期的な検査を
今回は、卵巣の疾患をテーマに、疾患の種類や早期発見のためにできることについて、解説しました。
卵巣は、女性ホルモンの分泌や妊娠に関わる重要な臓器です。卵巣疾患は自覚症状がでにくいですが、定期的に検査を受けて、万が一の疾患の早期発見につなげましょう。