女性の身体にさまざまな変化が起こる妊娠。おなかが大きくなるのはもちろん、手足のむくみや味覚の好み、吐き気やふらつきなど、通常とは違う状態を経験するかもしれません。なかで気になるものの1つが「おりもの」の変化。妊娠前の状態からどう変わっていくのか、何が正常で何が異常といえるのかを解説していきます。
妊娠でおりものが変化する理由は「女性ホルモン」
おりものとは膣の中をキレイに保ち、細菌が子宮内に侵入するのを防ぐなど女性の身体を守ってくれるものといわれていまです。
妊娠をしていない状態であれば生理周期に合わせて色や粘度が変わったり量が変化したりしますが、妊娠すると女性ホルモンの分泌量が変化し、妊娠〜産後まで通常とは異なる状態になります。
妊娠の成立(受精卵の着床時)
受精卵が着床すると、ヒト絨毛生ゴナドロピン(hCG)と呼ばれるホルモンが分泌されます。
着床が起こるタイミングは次の生理予定日の数日前となるため、おりものは粘り気がある白っぽいものが一般的。
個人差はありますが、血が混じる、茶やピンク色のおりものが見られる場合は着床の可能性もあります。
妊娠初期
妊娠初期はhCGの分泌量が増えることでエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)も増えていきます。
おりものはサラッとした粘り気のないものとなり、ニオイもきつくなる傾向になります。白濁、クリーム色、出血が混ざったピンクや茶になることもあるかもしれません。
妊娠中期
妊娠中期になると、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が妊娠前の50〜1100倍になるといわれています。
そして妊娠20週頃にはhCGの分泌量が落ち着き、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)が増え、母体と胎児に栄養を届ける役割を担います。
この時のおりものは、量が増え、白っぽく粘つきがあったり、少し黄色がかったり、酸っぱいニオイなどが特徴です。
ホルモンバランスの乱れで一時的に水っぽくなることもあります。
ただし妊娠中期でも破水する可能性はゼロではなく、以下のような症状があった場合、おりものではなく破水かもしれません。
- 水のようなサラサラした液体が膣から流出する
- 透明、白っぽい、黄色
- 甘酸っぱいまたは生臭いニオイがする
破水とおりものの見分け方は一般的に難しいとされています。様子がおかしいと思ったらすぐに出産を予定している産院やクリニックに連絡をしてください。
妊娠後期
中期に続きエストロゲンとプロゲステロンの分泌量がさらに増え、ホルモンバランスは不安定です。
おりものの量も増え、個人差はありますが粘り気があったり、色が濃くなったり、水っぽかったり、ニオイが強くなったりする傾向にあります。
水っぽいおりものが大量に出た場合は破水の可能性も考えられます。出産間近の臨月になると「おしるし」として、おりものに茶褐色やピンクなど少量の血液が混じっていることもあるでしょう。
出産後
出産後は増加していたエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少し、ほぼゼロになるといわれています。
子宮の大きさが元に戻る際、子宮内膜が剥がれ、古くなった血液が悪露(おろ)として分泌されるのです。
出産直後は生理のような赤色、数日経つと黒っぽい血の色、順調にいけば薄ピンクの色へと変化し、3週間〜2ヶ月ほどで落ち着きます。
悪露がなくなると、エストロゲンの分泌が少ないため、おりものも減りますが、むずむず感やニオイが気になる場合は産婦人科に相談してもよいかもしれません。
妊娠中に注意すべき「おりもの」の変化
妊娠中の健康なおりものは透明・白濁・クリーム色で、ニオイやむずむず感もいつもより何となく気になるかなというくらい。
逆にニオイがきつい、色がおかしいなど異常と判断されるような症状が見られたら要注意です。妊娠中に注意したいおりものの症状をまとめてみましたのでぜひチェックしてくださいね。
水っぽく、異常に量が多いおりもの
胎児と羊水を包んでいる卵膜が破れ、羊水が流れ出ている破水状態の可能性があります。
ナプキンに大量に出ている場合は産院にすぐに相談しましょう
赤褐色やピンク色で不正出血があるおりもの
子宮頸がんや萎縮性腟炎、子宮頸管ポリープの可能性が考えられます。
早産や切迫流産の恐れもあるので、できるだけ早めに産婦人科を受診してください。
カッテージチーズのようにポロポロした白いおりもの
膣周辺にむずむず感や刺激感を伴うことがあり、代表的な病気としてカンジダ膣炎や頸管炎などの疑いが考えられます。
黄緑色で量が多いおりもの
細かい泡が混じっている、ニオイがきつい、むずむず感があるといった場合、トリコモナス腟炎や細菌性腟炎などの疑いがあります。
また、下腹部の痛みや発熱がある場合は淋菌感染症の可能性もあるかもしれません
おりものの変化を意識してみましょう
妊娠中のおりものは、妊婦さんの状態をチェックする大切な役目を持っています。ママと胎児の両方を守ることにつながりますので、妊娠中の方もそうでない方もこの機会におりものの変化について意識してみてはいかがでしょうか。