日本でも少しずつ認識されるようになってきた「プライベートゾーン」に関する教育。
性犯罪や性暴力から子どもを守ることにもつながるデリケートゾーンの扱い方について、どうやって子どもに伝えるべきか迷われる方も少なくありません。子どもが自分の身体を大切にしようと意識を向けてもらうためには家庭でなにを伝えればいいのか、今からできることをご紹介します。
プライベートゾーンのこと、いつから教える?
プライベートゾーンとは、胸やおしり、性器、口をはじめ、他人に触れてほしくない、"自分だけの知られたくない身体のパーツ"を指します。このプライベートゾーンと深く関係する性教育は、私たちにとって身近なことであり、自分の身体を守るために必要な知識。とはいえ、早いうちから教えなくてはと大人からグイグイ話す内容でもありません。プライベートゾーンの扱い方は、言葉を覚え、少しずつ会話ができるようになる3歳頃、子どもが性に対して興味を示してきたタイミングで教えることがひとつの目安になります。
少し記憶を振り返ってみてください。20〜40代の女性が記憶する性教育といえば、小学校3〜4年生で教わる保健体育の授業。身体の変化や発達について学びますが、そこまで詳しくプライベートゾーンを勉強することはなかったように思えます。むしろ何となく恥ずかしいと感じながら授業を聞いていた方も多いのではないでしょうか。
そんな性教育に対して、近年は好奇心が旺盛になる幼児期から「自分を守る大切な知識」として子どもに性教育を教える家庭が増えている傾向があります。そもそも人間にとってデリケートゾーンは尊い命が宿るとても大切な場所。「恥ずかしい」「教えるのに抵抗がある」「話すのが苦手」という表情や態度を大人が見せると、子どもも敏感に反応してしまい、その感覚が伝染してしまう可能性があります。「まだ大丈夫だろう」という大人の判断ではなく、子どもが何気なく発した言葉や行動から伝えてあげましょう。
プライベートゾーンの扱い方、どうやって伝える?
プライベートゾーンの扱い方をいざ子どもに教えようと思ったとき、何をどこから伝えたらいいのでしょうか。例えば3歳を過ぎて、海やプールで水着を着て肌を露出する機会が増えた、身体をくすぐる、スカートをめくるなどプライベートゾーンに関係する子ども同士の触れ合いがあったなど、日々の行動をきっかけに教えるのは、親としても伝えやすいタイミングです。何を準備して、どうやって伝えるのか、いくつかの方法をまとめてみました。
絵本を使って伝える
最近では、性教育を題材にした絵本が登場しています。人気の絵本を調べて購入したり、図書館で借りたりすることは、性教育の入門編として始めやすいのではないでしょうか。代表的な絵本をいくつかご紹介します。
・『ぼくどこからきたの?』(ピーター・メイル著/河出書房新社)
・『だいじだいじどーこだ?』(えんみ さきこ著/大泉書店)
・『性の絵本 みんながもってるたからものってなーんだ?』(たき れい著/KADOKAWA)
絵本なら性に関する豆知識が親子で学べそうですよね。手に取りやすいよう家の本棚に目立つように並べておくなど、子どもが興味を持ちやすくする工夫をしてみると、子ども自身が自発的に知ろうとして、会話のきっかけになりそうです。
生命の安全教育を活用する
文部科学省の公式サイトでは、『生命(いのち)の安全教育教材・指導の手続き』と呼ばれる、文部科学省と内閣府が連携した教育教材や指導の手引きがあります。幼児期、小学校(低・中学年、小学校(高学年)、中学校、高校と、対象の年代ごとに教材がダウンロードできるので、タブレットやスマホを有効活用したいという方はチェックしてみてください。どうやって言葉にすればいいかわからない場合は、動画教材もあるので併用して活用するのもおすすめです。
子どもの年齢に合わせて教材の内容や言葉の選び方は異なるものの、性暴力の根底にある誤った認識や行動を正しく理解し、生命を大切にする考えや、自分や相手を尊重する気持ちや態度を身に付けるために必要な知識が得られます。
プライベートゾーンのこと、何から教える?
性教育の学びは、まずプライベートパーツを知ることから。小さな子どもが被害者となる性犯罪が増えているという社会問題もありますので、「口、胸、性器、おしり」のプライベートパーツは他人に見せない・触らせない、性に関係する自分の大事な身体の一部だと根気強く教えていくことが重要です。家庭で教える以下の内容と併せて、他人との距離感やパーソナルスペースについても家族で話し合う時間を作ることをおすすめします。
□プライベートゾーンに興味を持つことは恥ずかしいことではない
□プライベートゾーンは自分の大事なところ。他人には見せない
□他人の身体は、勝手に見たり触ったりしない
□プライベートゾーンを触るのは、ひとりだけの時間
□他人に触られてイヤな気持ちになったら「いやだ」と伝える
自分や相手の身体について考えられるようになったら、デリケートゾーンの正しいケアも伝えていきましょう。特に女性のデリケートゾーンは、身体の不調に影響を与えるホルモンバランスと直結します。性器まわりを強くこすったり体用のボディソープで洗ってしまうと新たなトラブルにつながる可能性もあるので、子どもの健康を守る意味でも正しいケアを大人から教えてあげましょう。
裸になるおふろの時間は、まさに親子だけのプライベートな時間。デリケートゾーン用の石鹸やスキンケアの使い方をひとつひとつ丁寧に伝えてあげるチャンスです。髪の毛にはシャンプーやトリートメント、身体はボディソープ、顔にはフェイスソープ、デリケートゾーンには専用のソープやスキンケアがあると日常の中で会話に登場すれば、それが当たり前と自然に認識してくれる可能性があります。
男性だから、女性だから、という性別にとらわれずに「カラダ」を知ることは、多くのメリットにつながります。「赤ちゃんはどこからくるの?」など子どもが性について疑問を口にしたらチャンス到来。中途半端にはぐらかしたりウソをついたりせず、知識を分け与えてあげてください。
性犯罪の加害者・被害者にならないために、そして自分を大切にしてもらうため、身を守るために、大人も今の時代に合わせた価値観にアップデートしていくことが必要です。ぜひこの機会に子どもと話し合ってみてくださいね。