女性には、女性ならではの婦人科系トラブルがあります。それは、日常生活で見過ごしがちな小さなトラブルから、大きな病気までさまざま。そして、どんなトラブルを発症するかは年齢やライフステージごとで違います。今回は、ライフステージごとに発症しやすい女性特有の婦人科系トラブルについてご紹介します。
思春期(10代)女性が発症しやすいトラブル
思春期と呼ばれる10代女性に起こりやすいのが生理痛やPMS(月経困難症)などの月経(以下、「生理」)トラブルです。生理トラブルは閉経前の女性であれば誰でも発症する可能性がありますが、思春期の女性は子宮や卵巣の機能が成熟しておらず、生理トラブルに悩まされやすくなります。
生理痛
生理期間中、腹痛や腰痛、人によっては倦怠感、疲れ、頭痛など、大なり小なりトラブルを感じたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。
一般的に腹痛や腰痛が生理痛と呼ばれていますが、そんな生理痛がさらにひどく鎮痛剤が毎回必要だったり、腹痛や腰痛以外にもさまざまな症状が現れたりして日常生活に支障をきたす場合は、「月経困難症」と診断されることもあります。
生理痛は、「毎月のことだから」「数日我慢するだけだから」と、トラブルが起きても見逃してしまうことも。痛みがひどいときや、生理痛以外にも症状が重なる場合は、我慢せずに婦人科で相談するのも1つの方法です。
生理不順
10代の思春期は、卵巣や子宮の機能が発達途上であり、ホルモン分泌も定まっていません。そのため、生理が来たり来なかったりと生理不順になることもあります。また、過度なダイエットが原因となり生理不順になることも。
心も身体も未成熟な時期なので、見た目や体重に囚われすぎることなく、生理不順になるほどのダイエットは健康を害する可能性があることも知っておく必要があります。
PMS(月経困難症)
生理前に腹痛や頭痛、むくみや倦怠感などの身体的な不調、また、イライラしたり気分が落ち込んだりなどの精神的な不調が現れることがあります。
この生理前の不調をPMS(月経困難症)「以下、(PMS)」と言います。排卵が終わり、生理が始まるまでの黄体期には2つの女性ホルモンのバランスが大きく変動します。そのホルモンバランスの変化がPMSの原因と言われています。そんなホルモンバランスの変化に加え、ストレスや睡眠不足、自律神経の乱れ、体調不良などがPMS症状をさらに悪化させる可能性もあります。
性成熟期(20代〜30代)の女性が発症しやすい婦人科系トラブル
比較的若い世代の20〜30代でも、婦人科系トラブルに見舞われることがあります。このようなトラブルを放置しておくと、病気へ進行したり不妊の原因になったりすることも。「まだ若いから」と過信することなく、トラブルや不調、違和感を感じたら早めに婦人科を受診することが大切です。
子宮頸がん
女性特有のがんの1つが子宮がん。子宮がんには子宮体がんと子宮頸がんの2種類があり、子宮頸がんは子宮の入り口に発生するがんです。子宮頸がんの罹患数を年代別で見ると、20代から増え、40代でピークを迎えます。子宮頸がんはワクチンでの予防も有効と言われています。
また、定期的な検診による早期発見が早期治療の鍵になるので、仕事や家庭で忙しい20代、30代の女性も検診を欠かさないようにしましょう。
子宮内膜症
子宮の内側を覆っている子宮内膜。子宮の内側以外に、子宮内膜に似た組織が増殖してしまう病気が子宮内膜症で、腹膜、卵巣、卵管、腸などに発生します。実際の子宮内膜のように女性ホルモンの影響を受けて増殖し、生理が始まると出血しますが、通常の生理のように体外に排出できません。その排出できずたまった血液が、炎症や周囲の組織との癒着の原因になります。
生理時には、子宮内膜と同じように痛みの原因物質(プロスタグランジン)が分泌されるため、より生理痛が重くなるのが症状の1つ。生理痛がひどいなと感じる場合、子宮内膜症のような病気が隠れていることもあります。なお、卵巣の中に子宮内膜症ができると、卵巣内に古い血液がたまっていきます。その状態を、卵巣チョコレート嚢胞と言います。卵巣チョコレート嚢胞によって排卵障害や卵管癒着を引き起こすと不妊の原因になることも。生理痛の痛みを我慢しすぎずに婦人科を受診することで、子宮内膜症も早期発見、治療が可能になります。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮内にできる腫瘍です。卵巣から分泌される女性ホルモンによって大きくなるため、女性ホルモンの分泌が盛んな性成熟期で発症することが多いのも特徴です。30歳以上の女性の20〜30%に見られ、決して珍しい腫瘍ではありません。良性腫瘍であり、発生場所や大きさによって症状も異なります。無症状の人もいれば、生理痛がひどくなるひと、月経量が多くなる人、貧血、頻尿、腰痛など症状はさまざま。
不妊や流産しやすい原因になる場合もあるので、子宮筋腫が見つかった場合は、定期的なチェックが必要です。
更年期(40代後半)の女性が発症しやすい婦人科系トラブル
40代も後半を迎えると、エストロゲンの分泌が急減し、生理が終わる閉経を迎えます。閉経を挟んだ約10年間を更年期と呼び、ホルモンバランスの変化による体調の変化、精神の不調などを感じやすい年代です。
更年期障害
更年期に心身に現れる不調を更年期障害と言います。症状はさまざまで、症状の強さや悩みも千差万別です。ほてりや大量発汗などのホットフラッシュ、頭痛、倦怠感、うつ状態が症状として現れることもあれば、肩こりや腰痛などの痛み、食欲不振に悩まされることも。エストロゲンの分泌が減少するので、デリケートゾーンをはじめとした粘膜も乾燥しやすくなります。
更年期障害の症状は日常生活で起きるような不調であり、自分では更年期障害と判断するのは難しい場合もあります。違和感や不調を感じた場合は、早めに専門医に相談するのが良いでしょう。
子宮体がん
40代〜50代女性に多いのが子宮体部に発生する子宮体がんです。主な症状は不正出血なので、とくに更年期にさしかかり生理周期も乱れてくるため、出血が生理なのか、不正出血なのか判断が難しくなります。早期発見、早期治療が重要になるため、心配な症状がある場合は早めに受診するようにしましょう。
老年期(60代以降)の女性が発症しやすい婦人科系トラブル
老年期にはエストロゲンの分泌がなくなり、それまでエストロゲンで維持していた肌や骨、血液などにトラブルが起きることもあります。
萎縮性膣炎
エストロゲンの分泌がなくなることで、膣の潤いがなくなり、デリケートゾーンが乾燥しやすくなります。粘膜や膣が乾燥、萎縮して雑菌が繁殖して起こる炎症が萎縮性膣炎です。デリケートゾーンがむずむずしたり、おりものの色がおかしいと感じることも。症状を感じる場合は、婦人科を受診しましょう。
ライフステージで変わる婦人科系トラブル
女性ホルモンの分泌量は年齢や妊娠、出産経験などのライフステージによって変わります。そのため、年齢やライフステージによって起こりうる婦人科系トラブルも変わってきます。大切なのは、どのステージにいたとしても、トラブルや不調を感じた場合は早めに専門家に相談することです。何事も早期発見、早期治療が鍵。平均寿命が長くなっている現代だからこそ、健やかに年齢を重ねられるよう、自分の身体と向き合っていきましょう。